数次相続と遺産分割協議書
相続による所有権移転登記をしない間に、亡くなった方(被相続人)の相続人が死亡し、次の相続が開始されることを「数次相続」と呼びます。
ご相談を伺っていると、結構このようなケースが多く、その際の遺産分割協議は、比較的長期化することがあります。
また、遺産分割協議書の作成作業も、遺産分割協議参加者の立ち位置や第1の相続から最終の相続までの経過を明確に記述する必要があるなど、通常よりも難易度が上がります。
このような遺産分割協議書の作成は、専門家である私どもでも、比較的神経を遣う業務なのです。
[ちょっと考えてみましょう!]
亡くなったAさんの相続人として、子供Cさん,Dさん,Eさんがいました。(Bさんは既に亡くなっています) しかし、相続登記(所有権移転登記)をする前に、Cさん,Dさん,Eさんも次々に亡くなってしまいました。 残された家族で、遺産分割協議を行った結果、Aさんが生前所有していた不動産は孫のD2さんが相続することになりました。 どのような経過をたどって、その不動産の所有権がD2さんが移転したと考えることができるのでしょうか? また、誰がどのような立場で遺産分割協議に参加したのでしょうか? |
どのような経過をたどったのか?
相続により所有権が最終的にD2さん移転するためには、該当の不動産が第1の相続で①Dさんの単独所有,②Eさんの単独所有,③DさんとEさんの共有のいずかである必要があります。
先に申し上げたとおり、遺産分割協議書には、第1の相続から最終の相続までの経過を明確に記述する必要があり、上記①から③のいずれに当たるのかを記述しなければなりません。
それは、数次相続が発生した場合、第1の相続、第2の相続といった順番で登記を行うことが原則になっているからなのです。
具体的には、以下のようなことを記述します。
記載すべき、所有権移転の経 | |
第1の相続でDさん単独所有 [ケース①] |
ⅰ)遺産分割協議の結果、Aさんの不動産をDさんが相続した旨 ⅱ)遺産分割協議の結果、Dさんが取得した不動産をD2さんが相続した旨 |
第1の相続でDさん単独所有 [ケース②] |
ⅰ)遺産分割協議の結果、Aさんの不動産をEさんが相続した旨 ⅱ)遺産分割協議の結果、Eさんが取得した不動産をD2さんが相続した旨 |
第1の相続でDさんとEさんの共有 [ケース③] |
ⅰ)遺産分割協議の結果、Aさんの土地をDさんとEさんが共同で相続した旨 ⅱ)遺産分割協議の結果、Dさんが取得した不動産の持分をD2さんが相続した旨 ⅲ)遺産分割協議の結果、Eさんが取得した不動産の持分をD2さんが相続した旨 |
※なお、中間の相続が単独相続である時(ケース1)には、中間の相続登記を省略して、現在の相続人へ直接、相続による所有権移転登記をすることができ、登録免許税が節約できますので、このような観点でも相続の経過を明記することが重要です。
①,②のケースは中間相続登記ができるため、登録免許税が節約可能です。
遺産分割協議の参加者は?
その遺産分割協議には誰がどのような立場で参加したかを記述する必要があります。
ケース①を例題に誰がどんな立場で参加したかを考えてみましょう。
遺産分割協議の参加者 | |
第1の相続 | 本来、Aさんの相続人であるCさん,Dさん,Eさんが、Aさんから引き継ぐ不動産の遺産分割協議を行います。 しかし、全ての相続人が死亡しています。 そこで、不動産を相続したCさんから、さらに相続したC1さんとC2さんが、Cさんに代わって遺産分割協議に参加します。 同様にD1さんとD2さんがDさんに代わって参加することになります。 そして、Eさんの代わりとして、Eさんの相続人でもあるC2さんとD2さんが参加します。 したがって、C相続人C1,D相続人D1,C相続人兼E相続人C2,D相続人兼E相続人D2が遺産分割協議を実施した旨を記載します。 |
第2の相続 | Aさんが生前所有していた不動産は、既に亡くなったDさんにその所有権は移っていることから、Dさんの相続人であるD1さんとD2さんが遺産分割協議を実施して、該当の土地をD2さんが相続した旨を記載することになります。 |
数次相続に関わる遺産分割協議や遺産分割協議書の作成はたいへんです。
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